
交通事故は起きていないが、この場所は危ないなと感じた場所はありませんか。
私が子供と一緒に保育園まで歩いて向かっているとき、ここを子供一人で歩かせるのは怖いなと感じた場所があります。
そこは、交差点ではないのですが、カーブで見通しが悪く、横断する際に車が来ているかどうかが直前までわからないような場所です。注意喚起看板もなく、カーブミラーもありません。ドライバーや子供自身が気を付けて通るしかありません。
結局、私はどこにも伝えず、今もそのままになっています。誰かが何とかしてくれると思っていたのですが、なかなかうまくいかないですね。
こういった場所に交通安全施設を作るかどうかについて、市区町村はどのような対策をとっているのでしょうか。
総務省行政評価局が行った「生活道路における交通安全対策に関する政策評価」の結果報告書から見ていきます。
市区町村が施設の整備箇所を決める際に、ETC2.0や民間のプローブ情報などを使って把握した「潜在的高リスク箇所」(事故は起きていないが事故リスクが高い箇所)をどの程度参考にしているかには大きな差があります。
413市区町村のうち「おおむね参考にしている」と回答した市区町村はわずか12市区町村(2.9%)で、「一部の箇所で参考にしている」も79市区町村(19.1%)に留まっています。一方、「ほとんど参考にしていない」が321市区町村(77.7%)と、約8割の自治体が潜在的高リスク箇所を整備の優先順位付けに活用できていない状況が明らかになりました。

ETC2.0の情報を活用している市区町村でも、その多くは「ゾーン30プラス」などのゾーン対策の地区内に限定して活用していました。
ただし、ゾーン対策地区内以外の個別の箇所の施設整備に活用している市区町村が一部で存在します。
- 横浜市は、交通安全教育に積極的な小学校を中心に、ETC2.0情報による速度分析結果、事故情報、交通規制、通学路情報などを地図上に重ね合わせて潜在的高リスク箇所を把握し、施設整備を進めています。
- 岐阜市は、損害保険事業者から民間プローブ情報とAIによる分析結果を入手し、地域住民が参加するワークショップで整備箇所を検討する仕組みを導入しています。
- 大府市は、登下校時間帯に通り抜け車両が多い通学路を対象に、国道事務所からETC2.0情報を提供してもらい、潜在的高リスク箇所を把握して施設の整備をしています。
- 朝来市は、交通事故統計情報のオープンデータや民間のプローブ情報を活用して潜在的高リスク箇所を探してみたところ、住民要望や通学路点検では挙がらなかった箇所も複数抽出することができました。これらの結果は、施設整備だけでなく、見守り活動の重点箇所の選定にも活用しされています。
さらに、ETC2.0情報や民間のプローブ情報を広域的に入手して、市内全域の潜在的高リスク箇所を把握した上で施設整備を進めているところが9市区町村あり、中にはAIを活用して事故危険度を予測しているところもあります。
- 船橋市は、交通事故統計情報のオープンデータで把握した事故発生箇所、住民要望があった箇所、ETC2.0情報で把握した潜在的高リスク箇所を基にして事故リスクを評価し、リスクの高いエリア・箇所に施設を重点的に整備しています。
その結果、人身事故件数は、令和元年から4年で15.9%減少しました。
- 郡山市は、自動車製造事業者と連携し、民間プローブ情報を使って事故多発交差点の事故リスクを分析し、高リスク箇所における事故要因を分析した上で施設整備を進めています。
その結果、人身事故件数は、令和元年から4年で42.8%減少しました。
- 刈谷市と大府市は、市民参加型プロジェクトに参加した住民のスマートフォンを通じて急ブレーキ、急アクセルなどの情報を収集し、潜在的高リスク箇所を把握。交通事故統計情報のオープンデータで把握した事故実績を加えて分析し、施設の優先整備箇所を決めています。
その結果、人身事故件数は、令和元年から4年で、刈谷市は50.0%、大府市は36.5%減少しました。
- 北九州市と鹿児島市は、交通事故総合分析センターが公表しているメッシュ地図を使って事故多発エリアを絞り込み、このエリアにおいてETC2.0情報を使って潜在的高リスク箇所を把握し、重点的に施設整備を進めています。
その結果、人身事故件数は、令和元年から4年で、北九州市は30.7%、鹿児島市は42.4%減少しました。
- 豊橋市は、大学と連携して公用車や民間事業者の車両のプローブ情報を収集。歩行者衝突警報などのデータを分析し、潜在的高リスク箇所を把握して整備を進めています。
その結果、人身事故件数は、令和元年から4年で47.0%減少しました。
- 浜松市は、民間のプローブ情報、事故データ(進行方向など交通事故統計情報のオープンデータにはないデータを警察から入手)、道路構造、人口、天候などをAIに学習させ、事故危険度予測モデルを構築し、事故リスクが高い箇所に施設を整備しています。
その結果、人身事故件数は、令和元年から4年で33.7%減少しました。
このほかにも、重大事故の発生箇所と類似した道路環境を持つ交差点を一斉点検し、潜在的高リスク箇所を把握して整備する市区町村があります。
- 郡山市では、過去の死亡事故発生箇所の道路環境等を踏まえ、「一時停止規制がなく優先が分かりにくい」「出会い頭の事故が想定される」「スピードが出やすい」などの観点で、危険な交差点を283か所抽出。現地を点検するとともに、都道府県警察との協議を経て必要な箇所に施設を整しています。
以上のような事例をみると、潜在的高リスク箇所をデータで把握し、科学的根拠に基づいて整備を進めることが事故減少に効果があるように思います。一方で、約8割の市区町村がデータを十分に活用できていない現状があり、データ活用の促進が今後の重要な課題になるのではないでしょうか。

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