事故リスクが高い箇所への交通安全施設の整備を行う市区町村への支援

 これまで書いたように、事故多発箇所や、事故は起きていないが事故リスクが高いと考えられる箇所(潜在的高リスク箇所)に向けて優先的に交通安全施設の整備を進めている市区町村は少ないのが現状です。

 市区町村からは、「施設整備は住民要望への対応を基本としており、要望がない箇所に施設整備することは考えにくい」「住民要望への対応だけで手一杯である」「住民要望があった箇所に事故多発箇所や潜在的高リスク箇所も含まれている」「データを使って把握するスキルが不足している」という声が聞かれます。

 こういった状況の中、警察や都道府県は、どのように考え、関わっているのでしょうか。総務省行政評価局が行った「生活道路における交通安全対策に関する政策評価」の結果報告書から見ていきます。

 警察は、市区町村が交通事故防止のための施設整備を進められるよう、事故情報や危険箇所の情報提供を積極的に行っています。具体的には、事故が発生した場所の情報を随時市区町村へ伝えるほか、現地診断への参加を要請し、施設整備が必要と考えられる箇所を共有しています。
 一部の警察では、事故が多発している場所だけでなく、潜在的に事故リスクが高い場所についても独自に把握し、市区町村へ情報提供しています。

 調査した市区町村からは、警察から情報提供された箇所については、施設整備の検討や実施につながっているとの声が多く、警察の情報提供が市区町村の対策を後押ししていることがうかがえます。

 さらに、重大事故が起きた場所と道路環境や事故要因が類似する箇所を抽出するため、一斉点検を行っている警察もあり、事故リスクの高い場所を体系的に把握する取組が進んでいます。

 都道府県の中には、市区町村が事故多発箇所や潜在的高リスク箇所に対して施設整備を行う際の支援を実施しているケースが見られます。支援内容は都道府県によって異なりますが、効果を上げている事例もあります。

  •  神奈川県は、警察や市区町村と連携し、毎年警察署ごとに1〜2か所の事故多発箇所を選定。事故件数や事故の特徴(当事者の種類、車両の進行方向など)を踏まえて有効な対策を協議し、決定した対策を3年以内に実施するよう努めています。県は警察と協力し、進捗確認や効果検証も行い、結果を県のウェブサイトで公開しています。
     令和4年度に対策が完了した50か所では、対策前後6か月の事故件数が54.8%減少しており、顕著な成果が見られます。
  •  愛知県では、交通事故死者数ワースト1からの脱却を目指し、自動車安全プロジェクトチームを設置。市区町村に向けて民間のプローブ情報を活用した潜在的高リスク箇所への施設整備の取組を促しています。
     近年は、この取組への参加希望を募り、3年を1サイクルとして、潜在的高リスク箇所の把握、施設整備、効果検証を進めています。

 警察は、事故情報の提供や危険箇所の点検を通じて市区町村の対策を支援し、都道府県は、施設整備の支援や効果検証を行うことで、事故削減に成果を上げています。
 特に、神奈川県の事例は、データに基づく対策と継続的な検証が事故減少に大きく寄与していることを示しています。

コメント