交通安全施設はどう選ぶ? 事故データが活用されていない実態を解説

 これまで書いたとおり、市区町村は、生活道路に整備する交通安全施設の種類を決める際、交通事故の内容をあまり活用していないことがわかりました。

 総務省行政評価局が行った「生活道路における交通安全対策に関する政策評価」の結果報告書では、このことについて、次のような見解を示しています。

 市区町村が交通安全施設を整備する際には、事故内容を踏まえた科学的な判断が求められますが、現状では、その実践が十分に進んでいません。

  •  調査結果では、事故内容を「おおむね参考にしている」市区町村は33.2%にとどまり、「ほとんど参考にしていない」が22.3%、「一部で参考にしている」が44.6%となっています。事故内容を把握している市区町村の多くが「警察から提案があった場合のみ」事故内容を確認しており、活用範囲は限定的であることが明らかになりました。
     
     事故内容を活用して施設整備している市区町村の方が、令和元年〜4年の事故増減率が低く、事故減少に効果があることが示唆されています。つまり、事故内容を踏まえた施設整備は科学的に有効とみられるにもかかわらず、事故内容が十分に活用されていないというギャップが課題となっています。 
  •  次に、事故データの情報不足が課題です。
     事故防止に効果的な施設を整備するには、事故類型(出会い頭、右折時など)、進行方向、事故要因(人的要因・道路環境要因など)の把握が不可欠です。しかし、交通事故統計情報のオープンデータには、これらの情報が掲載されておらず、市区町村は事故要因を踏まえた整備判断を行いにくい状況にあります。

     市区町村からは、「オープンデータに事故類型や進行方向を掲載してほしい」という要望が寄せられています。また、警察に事故情報を照会しても、必要な詳細情報が得られないケースがあるという声もありました。
  •  さらに、警察からの提案や情報提供が十分でない市区町村があります。
     約2割の市区町村が「警察から提案を受けていない」としており、こうした市区町村では、住民要望や経験に基づいて整備内容を決めていますが、事故内容を踏まえた科学的な整備が進みにくくなっています。警察がより積極的に提案を行うことで、市区町村の整備の質が向上する可能性が高いとみられます。
  •  最後に、市区町村職員の知識不足や研修機会の不足も課題です。
     市区町村からは、「事故内容を踏まえた整備の知見が不足している」「どのような事故にどの施設が有効なのか、具体的な事例を学べる研修が必要」といった声が聞かれます。

     また、国土技術政策総合研究所は「交通事故の要因分析・対策立案に関する技術資料」を提供していますが、「内容が難しい」「大規模交差点の事例が多く、生活道路には活用しにくい」といった理由でほとんど使われていませんでした。
     国土交通大学校は、科学的分析に基づいた事故対策を行うための研修を開催していますが、参加者が少なく、市区町村からは「国の研修は予算確保が難しく参加しづらい」という意見が出ています。

 このように、総務省では、事故内容の活用不足、交通事故統計情報のオープンデータの不十分さ、警察からの提案不足、職員研修の不足という4つの課題が、市区町村が交通安全施設の種類を決める際の質を低下させているとみています。
 これらを改善することで、事故内容に基づく科学的な交通安全対策が進み、さらなる事故減少につながるのではないでしょうか。 

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