
交通事故を減らすために、国・都道府県・市区町村が行うべきことが定められている第11次交通安全計画では、事故の多いエリアに対して効果的・効率的な対策を行うことが求められていて、事故実績に基づいて交通安全施設の整備を進めることが重要とされています。
ほかに、ビッグデータを活用して潜在的な危険箇所を把握し、これらの解消を進めることも計画の柱とされています。
しかし、現実にはなかなかそうなっていません。総務省行政評価局が行った「生活道路における交通安全対策に関する政策評価」の結果報告書から見ていきます。
事故実績に基づいた施設整備の現状
調査した市区町村では、交通安全施設の整備箇所の優先順位を決める際に事故実績を「おおむね参考にしている」と回答した割合は11.4%にとどまり、「ほとんど参考にしていない」が44.6%と半数近くを占めています。多くの市区町村では、住民要望や通学路合同点検で把握した危険箇所を中心に整備を進めていて、事故実績の活用は限定的となっています。
一方、都道府県警察への調査では、一般的な事故対策よりも事故多発箇所への対策を優先すべきと回答した警察本部が23に上り、事故実績を重視する姿勢が強くなっています。これに対し、市区町村側は事故実績を必ずしも重視しておらず、道路管理者(市区町村)と交通管理者(警察)の間で認識の差がありました。
さらに、事故実績データを活用している市区町村とそうでない市区町村の事故増減率を比較すると、データ活用が事故減少に効果的であることが示唆されており、事故実績を整備判断に取り入れる重要性が裏付けられています。
潜在的高リスク箇所への施設整備
事故は起きていないが事故リスクが高いと考えられる箇所(潜在的高リスク箇所)については、市区町村の活用状況がさらに低くなっています。施設の整備箇所の選定において潜在的高リスク箇所を「おおむね参考にしている」と回答した市区町村はわずか2.9%で、「ほとんど参考にしていない」が77.7%と圧倒的多数を占めています。
市区町村は、潜在的危険箇所のデータを整備判断にほとんど取り入れていないのが実態です。
しかし、一部の市区町村では、民間プローブ情報やAI分析などの各種データを活用し、潜在的高リスク箇所に対する施設整備を進めています。こうした自治体では、事故が顕在化する前に対策を講じることにより事故防止に図っています。
事故実績や潜在的高リスク箇所のデータ活用は、事故防止に効果的であることが示唆されているにもかかわらず、市区町村では十分に活用されていません。都道府県警察は事故データを重視していますが、市区町村との認識の差が課題となっています。
今後は、データに基づく科学的な交通安全対策を市区町村レベルでも広げていくことが求められているのではないでしょうか。

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