
国が定めた第11次交通安全基本計画では、交通安全対策にEBPM(証拠に基づく政策立案)を導入し、「整備した対策の効果を検証し、必要に応じて改善する」ことが求められています。
国土交通大学校による道路管理者向けの研修では、効果把握の指標として、「事故データ」「交通挙動」「アンケート 」が示されています。
しかし、総務省行政評価局が行った「生活道路における交通安全対策に関する政策評価」の調査では、市区町村による交通安全施設の整備後の効果把握は、ほとんど進んでいないことが明らかになりました。
市区町村全体で整備効果を把握している自治体は全くなく、その理由は、次のようなものでした。
- 業務量が多く、整備箇所ごとの効果検証を行う余裕がない。
- 住民要望に基づく整備が中心であり、事故件数による効果把握の必要性を感じていない。
- 効果把握の手法が分からず、結果の活用方法も不明である。
- 生活道路では事故件数が少なく、統計的に評価しにくい。
- 整備と事故減少の因果関係が明確でないため、評価が難しい。
- 事故が起きていない箇所に整備した場合、効果を測定できない。
一部の市区町村では、警察から事故情報を受け取ったり、オープンデータ を活用して事故傾向を把握している例もありましたが、体系的な効果検証には至っていません。
網羅的な効果把握は困難な一方、事故リスクが高い箇所や自転車事故対策など、特定のテーマに絞った効果把握を行っている市区町村がありました。これらは市区町村独自の取組みであり、限定的ながらEBPMの実践例といえます。
- 花巻市では、事故多発箇所に施設整備した後、事故件数の推移を継続的に確認しています。もし事故が再発すれば、追加整備を行う仕組みを採用しており、「整備→効果確認→必要なら再整備」という循環型の対策が特徴
- 浜松市は、事故多発箇所について整備前後の各3年間の事故件数を比較し、減少率が30%以上なら整備完了、30%未満なら経過観察、増加すれば追加整備とする明確な基準を設けています。EBPMを生活道路で実践している代表例
- 名古屋市では、人身事故が多い交差点にカラー舗装を実施し、施工前後の各5年間の平均事故件数を比較して効果を把握しています。長期的な視点で整備効果を評価している点が特徴
- 江東区と京都市では、自転車事故対策として矢羽根型路面表示などを整備し、整備前後で自転車の車道順走率(車道の左側走行の割合)を調査しています。事故件数だけでなく、交通挙動の改善を効果指標に使う点が先進的
総務省は、市区町村が効果把握を行えない背景として、「体制不足」「知識不足」「データ不足」「評価手法の未整備」の4点を指摘しています。
つまり、「整備したら終わり」になっており、整備の効果を検証して改善につなげる仕組みがないというのが現状です。
交通安全対策の質を向上させるには、市区町村が効果検証を行える環境の整備が望まれます。。。

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