総務省行政評価局の調査の中間報告

 以前に取り上げた総務省行政評価局による「生活道路における交通安全対策に関する政策評価」の中間報告が公表されていました。
 長文でもあり、内容を理解するのがなかなか難しかったので、簡単に要約してみました。

 令和元年に生活道路で発生した交通事故件数が多い順に市区町村を並べ、その上位 454 市区町村を対象に、書面で調査した。454市区町村の事故件数を合計すると、令和元年に全国で発生した生活道路での事故件数の9割を占める。

 46の都道府県警察、120の警察署を対象に書面で調査した。警察署は、実地で調査した市区町村を管轄している警察署とした。

 国土交通省地方整備局、都道府県、市区町村教育委員会、民間の事業者も、実地に調査した。

  •  全国の生活道路での事故件数は 、令和元年は107,755 件であったが、令和4年には84,952 件にとなり21.2%減少した。
  •  都道府県別に事故件数や自転車の事故件数を見ると、全国の合計件数のうちの7割以上は、件数上位の10都道府県分で発生していた。
  •  454市区町村で見ると、「人口」と「事故件数」は比例していたが、「人口」と「事故減少率」は比例していなかった。

 個人的な感想を書くと、全国の事故のうちの7割以上が、わずか10都道府県で占められていることに驚きました。おそらく人口が多い都道府県であると思われますが、どこであるかが気になります。
 あと、「人口」と「事故件数」は比例していても、「人口」と「事故減少率」が比例していないというのは、どう解釈すればよいのか…。よくわかりませんね。

市区町村と警察の取組の概要

 警察は交通規制や交通安全施設を整備し、市区町村は交通安全施設を整備していた。

 市区町村は、警察から「事故発生箇所」「事故リスクが高い箇所」に関する情報提供や、整備する施設の種類についての提案を受けていた。

市区町村は事故発生箇所を把握しているか

  •  事故件数を把握していた市区町村は7割程度であった。
  •  事故発生箇所を把握していた市区町村は8割程度であった。
  •  9割以上の市区町村が要望(通学路合同点検や住民からの要望)を基にして、事故リスクが高い箇所を把握していた。
  •  データにより、事故多発箇所を把握していた市区町村は 8割程度。データは、交通事故統計情報のオープンデータ、警察が作成する事故マップで確認、警察からの情報提供などであった。
  •  データにより、潜在的高リスク箇所を広域的に把握していた市区町村は、1割にも満たなかった。データは、ETC2.0 で収集した車のプローブデータ(国土交通省)、民間のプローブデータなどであった。

 通学路合同点検とは、学校、教育委員会、道路管理者、警察などの関係機関が連携して、通学路の安全を確保するために行う点検のことです。

 交通事故統計情報のオープンデータとは、道路上で車両等により引き起こされた人の死亡・負傷事故について、1 事故ごとに、日時、地点(緯度・経度)、車道幅員、当事者(車両、人など)、速度規制の内容等が記載されたもので、警察庁のホームページで公開されています。

 警察が作成する事故マップとは、各都道府県警察本部が作成している事故の発生箇所や内容が示したマップのことで、ホームページで公表されています。

 ETC2.0 プローブデータとは、ETC2.0車載器を搭載した車両から収集される走行履歴や挙動履歴のことで、道路での車の交通量、走行速度、走行ルート、急ブレーキ・急ハンドルなどがわかります。

市区町村は交通安全施設の整備箇所をどのように決めているか

  •  9割以上の市区町村は、住民要望や通学路合同点検結果を端緒として交通安全施設の整備を行う箇所を抽出していた。整備が必要かどうかは、現場で車の交通量・速度、道路の線形などを見て、担当職員がこれまでの経験を基に判断していた。
  •  一方で、一部の市区町村では、整備が必要かどうかを判断する際に、交通事故の実績のほか、潜在的高リスク箇所に関するデータを参考にしていた。
     事故実績を参考にしているのは42%、事故多発箇所を重視しているのは16%、潜在的高リスク箇所を参考にしているのは8.9%であった。

市区町村は整備する交通安全施設の種類をどのように決めているか

  •  事故内容を考慮して施設の内容を選定することを基本としている市区町村は少数であった。
  •  7割以上の市区町村は、現場で車の交通量・速度、道路の線形などを見て、担当職員がこれまでの経験を基に決めていた。
     中には、原則要望があった施設を整備する、単価が安い施設から整備を検討するとする市区町村もあった。
  •  9割以上の市区町村は、警察から整備が必要な交通安全施設の種類の提案を受けていた。
     警察が提案していたのは、現地診断の際が多かった。このほかにも、警察が交通安全施設の整備の必要があると判断した際や、事故多発箇所、警察による交通規制が困難な箇所や交通規制を変更した箇所で提案されていた。

 個人的には、この報告を見て、驚いたというか、信じがたいことがいくつもあります。皆さんも、そう感じるかもしれません。
 長くなりましたので、このことは次回に書きたいと思います。

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